「木質化」は、鉄とコンクリートによる都市環境を、環境負荷の低い木質材料に置き換えることを目標としたきわめて重要な政策課題だが、東南アジア諸国では市民レベルで十分に共有されていない。日本建築文化保存協会は一作年度より日本と東南アジアを結んだ新たな木質化フォーラムを立ち上げ、木造文化を基本としてきた日本の建築文化を再評価の上にCLT(交差積層材)など先進素材を加えた新たな木質技術とデザインの考え方を推進している。 2018年度は会場を日本に移し、浜松市などの地方公共団体の協力を得て、(1)視察、(2)建築家交流、(3)浜松国際会議、(4)浜松専門家ワークショップ、(5)展覧会Green, Green and Tropical展(6)出版、を実施した。その狙いは、日本と東南アジアの間で、森林資源の保全・有効利用から、都市の生態環境の促進、そして建造物やエネルギー利用の面での持続的な木質環境づくり、いわゆる「川上から川下まで」という仕組みを共有するところにある。
- 関連する国/地域
- 日本, シンガポール, フィリピン, インドネシア, マレーシア
- 協力団体/協力者
- 2018年度木質フォーラムにおける浜松国際会議実行委員会
申請団体より
東南アジアの問題は、建築が十分に社会性をもって捉えられておらず、市場に支配されている点にある。木質化のような本来政策的であるべき動きを業界が的確に把握せず、また政府もその点に関しては消極的である。今回の試みは市民や研究者だけでなく、敢えて、企業やパトロン層にも訴えかけ、社会の各層からの動きとなすことを狙っている。その意味で日本の地方都市の現場を東南アジアの関係者が実際に訪れる機会をもったことは今後への大きな足掛かりとなった。 東南アジア内でもシンガポールは別格として、マレーシアのように英国の影響下で制度を整えている国と、インドネシアやフィリピンでは事情は大きく異なる。次年度はフィリピンがホストとなることを承諾し、現在その準備を進めており、日本での成果を最大限フィードバックすることが求められている。これまでに培ったネットワークは大きな財産となりつつあり、顔の見えるフォーラムづくりを課題としたい。