ベトナムを代表する国立劇場の一つ、「ベトナムドラマ劇場」と協働して日本の能戯曲「谷行」を題材にしたオリジナル創作劇「生きる」をハノイで上演した。 公演に先立ち、延べ22日間の合同ワークショップ(2018年8月、11月)を開催。 まずは集団づくりから始め、歴史や文化の違い、演劇史の相互レクチャー、演劇の在り方について意見交換、即興による場面づくり、日本のコンテンポラリーダンスの表現技法を取り入れた身体トレーニングなど、俳優とともに練り上げる共同作業は多岐にわたった。創作にあたっては、日本とベトナムの演劇制度や様式、劇作術を再考し、きわめて多様化された舞台芸術における「身体」を問いながら、フィジカルな集団創造に挑戦。そして、両国の演劇環境に新しい視座を提供すべく、日常の生活文化を取り入れ、言葉に依存することなく、現代人の感覚を持って原作「谷行」の世界観を楽しめるように工夫し、演劇環境づくりでは、一般客への情報宣伝、チケットの有料化を積極的に試みた。 発足人でありながら、プロジェクト半ばで逝去した共同演出のアイン・トゥー氏には、哀悼の意を表す。
平成26年度実績 https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/ja/grant/pp1423/平成27年度実績 https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/ja/grant/pp1559/平成28年度実績 https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/ja/grant/pp1641/ 平成29年度実績 https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/ja/grant/cc1752/
- 関連する国/地域
- 日本, ベトナム
- 協力団体/協力者
- ベトナム国立ドラマ劇場
申請団体より
根本で問うべきことは、ベトナムで演劇をする意味である。 ベトナムには、どのような公演でも、原則として「検閲」があり、政府から許可を取得する必要がある。検閲公演後には、劇場側と政府関係者との会議が行われる。社会主義国家では、政治や社会を批判した内容や性的な表現はタブー視される。さらに言語統制やインターネット上で規制も厳しい。こうした規制は、日本と比べるとベトナムの演劇の発展を制限していると感じた。 本事業では、一つの言語に閉じ込めることなく、ひとつの形式、年功序列、トップダウン、社会階級、そして特定の観客に限定していることに、ことごとく挑戦した。実験的な要素を多く含んだプロジェクトだったが、舞台作品の完成度においては、納得しているわけではない。