現代インドネシア民族染織におけるグローバリズムとローカリズムの交錯―技術文化の視点から分析した素材と染め、機と紋様を基礎として―
多民族国家インドネシアは豊かな染織の伝統をもち、地域ごとに固有の民族染織が発達した。スラウェシ島タナ・トラジャ県では一旦廃れた織物生産が復活し、手織り布を仕立てた儀礼服や制服が広く着用されている。この復興を支えているのは、経済発展にともなう地域における需要の拡大と政府の産業文化政策である。この地域産業は在来織物技術をもちいた家内生産により、技能の伝達は従来の母子関の伝習から、講習会・共同組合を通じた「教える-学ぶ」という関係性による学習に変化した。さらに、近代の家内生産では、新しい顧客の獲得や顧客の要求に応える文様技法の開発が織り手側に要求され、フェイスブックによる受注、スマートフォンの情報による文様の習得など電子メディアの活用も始まっている。このような、新旧の技術的要素を組み合わせて発展する地域織物は、さらに、グローバルな「地域ブランド」への展開が地域政府によって構想されている。本プロジェクトは、再生する民族染織が在来の機織りに依拠しながら、近代的なメディアを活用してグローバル経済のネットワークと連携する様態を明らかにすることを目指した。
- 主な活動地
- ジャカルタ、スラウェシ、ジャワ
- 受入機関/協力者
- Herry Yogaswara(インドネシア国立科学研究院)