伝統文化の継承を通し、地域の誇りの再認識を促す交流事業

  • アジア・市民交流助成
採択年度
平成30 (2018) 年度
助成額
JPY 1,061,329
活動国・地域
タイ

タイ北部には約100万人の山地民が暮らしているが、様々な要因で伝統文化の継承が難しい状況である。一方、宮城県女川町では獅子舞の維持と子ども達への継承に力を入れてきた。東日本大震災で壊滅的な被害を受けたが、獅子が避難所等を回り、人々の心の復興に大きな力を発揮した。

本事業は、日本とタイの子どもたちが獅子舞の演舞を通して交流し、相互理解を深めると共に、伝統文化継承の重要性を再認識することを目的として実施した。2018年7月25日~31日、女川町の大人3名と中高生4名の獅子舞がタイを訪問。山地民の学校、AIDS孤児施設、山村地域等で、太鼓と笛に合わせた演舞はエネルギーに溢れ、大歓迎された。

申請団体より

獅子舞が始まると、日本と同じく、子どもは泣き出し、逃げていたが、高齢者は手を合わせて獅子を拝み、音楽に合わせて踊る人もあり演じる人と観客が一つになった。言葉が伝わらない中でも演舞終了後は握手を交わし、若者たちは写真を撮り合い、いつまでも別れを惜しむ素晴らしい交流が繰り広げられた。文化や宗教は違っても、豊作や幸せを祈る気持ちは人々の心に直接響き、伝わったのだと思われる。タイの精霊信仰では精霊が宿るとされている頭を触ることはタブーであるが、人々の輪に獅子が入って厄落としを始めると、自ら頭を差し出す人が何人も出てきて、列ができてしまったことには驚き、感動した。事業を通して人と人との交流に言葉は必要ないのだということを実感した。

タイの村人からは、「外国の文化を見る機会などほとんどない山の中に、日本獅子や大きな楽器を運んできて演奏してもらえたことが嬉しい」と自分の村を選んでくれたことへの感謝の言葉を受けた。チェンマイ在住の日本人会の方々からは、「本格的な日本舞踊などの公演も見る機会があるが、昔から自分たちの暮らしに沁み込んでいる太鼓や笛、獅子舞に久しぶりに直に触れることで、懐かしさと共に日本人の誇りをもう一度取り戻した」「自分たちのアイデンティティを再認識した」との感想が寄せられた。

今回の事業は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標11の「住み続けられるまちづくりを」に貢献することができたと思う。今後はさらにこの事業を発展させ多くの村に獅子舞を連れて行きたい。また、タイ国内で山地民の伝統舞踊や伝統音楽のコンペティションなどを行ってみたいと考えている。

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