バリの女形舞踊「レゴン・ナンディール」の若い世代のダンサーと日舞花柳流舞踊家が、相互にバリと日本を訪れてワークショップやコラボレーションを含んだ舞台公演を行った。 2018年5月、花柳流の2名がバリ・プリアタンを訪れ、ダンサーに日舞「さくら」を指導。250名の観客を前に、その成果をバレルン・ステージで発表した。7月にはバリの若手ダンサー4名が来日し、花柳流の舞踊家と共に、東京で『「女形」舞踊、バリと日本が出会う』と題した公演を行った。バリで復活させた女形舞踊「レゴン・ナンディール」を初めて紹介し、その他の演目も「女形」のバリエーションと関連づけて見せることで、バリ舞踊の新たな見方を提案した。
- 関連する国/地域
- 日本, インドネシア
- 協力団体/協力者
- 花柳流
- バレルン・ステージ
- 独立行政法人日本芸術文化振興会
申請団体より
伝統芸能では、その固有のスタイルをどう現代につなげて活性化させ、新しい創造につなげるかという問題が常にある。その問題を、日本舞踊・バリ舞踊の双方の交流により探った。その最初の目的は達せられ、今後のさらに踏み込んだ共同創作の基盤となった。 バリダンサーは日舞・歌舞伎などの日本の「女形」の伝統に触れ、また、日本の観客から好意的な評価を得たことで、当団体がバリ人と共に復活させた「女形」舞踊が、価値のある舞踊スタイルであることが認識できた。村では新しいガムラングループが作られ、日本をテーマにした新作ダンスも生まれた。従来のように村の宗教伝統に依拠するのではなく、若者の自主的な発想からの創作が予想以上の成果につながった。 一方、花柳流舞踊家も組織の枠、文化の枠を超えた共同の創作に対して大きな刺激を受け、自分たちの創作のモチベーションを得たと証言する。今後、組織の枠と舞踊家個人の創作をどう結びつけるかが問われるだろう。 伝統芸は過去を守る。だが、それは創造の停滞にもつながりかねない。バリでは歴史的に、伝統を現代につなげる役目を外国人が果たしてきた。外からの視点で見直し、新たな芸能運動につなげ、それがまた「伝統」に組み込まれる。いわば、外国との交流からバリ芸能は成熟してきたのだ。私たちの試みも、その延長線上にある。