文化的な活気に溢れた「潜在性の高いアジアの都市」という視点で都市を選び、アジアのアーティストが複数都市を巡回する、かつてない先駆的なプロジェクト。現地の芸術団体やプロデューサーとともにコ・キュレーションしながら、国際的な活動とローカルな活動が出会うことで、同時代舞台芸術の磁場を顕在化させる。毎年アジアの2都市を巡回し、各地でパフォーマンスやトーク、ディスカッション、展示等を開催。多角的な発表・出会いの場のデザインと、開催年ごとに異なるテーマで、アジア域内での実践/歴史に緊密に関わるアーティストの同時代作品を紹介・研究・議論する。第1回目となった2018年は、開催テーマをインド系由来の伝統とその同時代性に設定し、ジョグジャカルタとクアラルンプールで開催。メインアーティストを南インドのチェンナイからパドミニ・チェターを、タイ・バンコクからピチェ・クランチェンを招へいし、パフォーマンス、ワークショップ、トーク、アーカイブ作品展示を実施。ほか、ワークインプログレス公演やリーディング公演、パネルディスカッションを実施し、アジアのアーティストのための交流プラットフォームを創り出した。
事業関連ウェブサイト https://jejak-tabi.com
- 関連する国/地域
- 日本, フィリピン, インドネシア, マレーシア, タイ, インド, スリランカ, オーストラリア
申請団体より
東南アジアの複雑な政治状況や文化背景を掬い取って、丁寧にその文化・社会的背景を分析する様な同時代舞台芸術の研究はまだまだ少ない。アジア域内で多くの大型プラットフォームが続々と立ち上がっており、欧米で活躍するアジアの芸術家が増えるなか、表現の言語化、理論化、歴史化が著しく遅れているため、同時代舞台芸術における国を超えたアプローチが急務であろうと本プロジェクトは立ち上がった。「Jejak-旅Tabi Exchange」では、大型のフェスティバル・プラットフォームとは違う形で、詰め込み型ではない余白が生まれる緩やかなデザインを重視することにより、有機的で丁寧な相互理解が醸造されることを実感した。ことに、アジアで活躍する芸術家は、検閲やジェンダー観、宗教観などセンシティブな問題を抱えていることが多いばかりか、第二外国語としての英語での表現力が相互理解に大きく影響してしまいがちなので、コミュニケーションにも時間を要し、プライベートな親密さや、ゆるやかなコミュニケーションが大きな理解に繋がりやすい。また、本プロジェクトを通じてこれまで大都市を経由する必要があったような出会いも、「旅する」というコンセプトによってローカルとローカルが出会うプラットフォームとしても機能したため、近隣諸国への関心が高まり、参加者によりアーティスト同士のコラボレーションや共同キュレーションのプロジェクトが立ち上がっている。芸術を支えるシステムや経済状況、プロジェクト・スキームが全く異なる東南アジアの各地域の事情に想像力を働かせられる様な共有知を育むことの重要性に気づいたと同時に、その様な意識的基盤を作るには十分な準備期間が必要であることを実感したため、2019年に関してはリサーチと丁寧な関係づくりを重視し、2020年に第2回を開催したい。