近年、世界の「成長センター」として目覚ましい発展を遂げている東アジア(ASEAN+3)であるが、この地域の持続的発展の鍵は、経済分野のみならず、その隣接分野における域内各国の連携強化にあり、なかでも喫緊に協力すべきは保健分野である。東アジアでは、グローバリゼーションの負の側面ともいえる、気候変動等による自然災害とその被災者の増加、地域の連結性向上による感染症の蔓延、そして医療の進歩による少子高齢化の加速などが顕著である。どの国も、これら保健分野の課題に単独で対処することは困難であり、地域レベルでの強靭な保健協力ネットワークの構築が急務といえよう。このような背景から、本事業は、7名の日本側メンバーによる「東アジアにおける強靱な保健協力ネットワークの構築に向けて」研究会を組織し、ASEAN+3諸国の有識者と協議を行い、東アジアにおける強靭な保健協力のあり方に関する政策提言を取り纏めた。
- 関連する国/地域
- 日本, シンガポール, フィリピン, インドネシア, マレーシア, タイ, ベトナム, カンボジア, ラオス, ミャンマー, ブルネイ, 韓国, 中国, ボツワナ共和国
- 協力団体/協力者
- マヒドン大学
- 国際医療福祉大学
- 日本医療・病院管理学会
申請団体より
本事業は、日本側メンバー複数名による研究会を中心に調査、研究を行い、さらにはASEAN+3各国の有識者を東京に招いてシンポジウムなど開催するなどして各国専門家と協議を重ね、最終的には、平時より災害医療を視野に入れた保健医療システムの構築・拡充と、国際的な協力体制の整備が必要であること、東アジアにおけるより強固な感染症対策ネットワークの構築が必要であること、高齢化社会に適応した社会・医療システムの構築が必要であること、などを含めた東アジアにおける強靭な保健協力ネットワークの構築のあり方に関して、政策提言を取り纏めることができた。また、本事業の実施によって、実際に日本国内、また東アジア地域における保健協力のためのネットワーク構築にも寄与することができた。 保健分野の協力の必要性などはこれまでも呼びかけられてきたが、感染症、非感染症、高齢化など、それぞれが細分化されつつ取り組まれてきた。それらをまとめて、強靭な保健分野の協力ネットワークの構築という観点から取り組むことができたことは、本分野の地域協力における発展にも大きく貢献した。 以上のような成果を上げることができたのは、本事業に理解を示しかつご助成していただいた国際交流基金アジアセンターあってのものであり、同基金の助成の意義は非常に大きく、今後の国際社会の発展に必須のものである。