2016年にスタートした振付家北村明子によるアジアとの国際共同プロジェクトである「Cross Transit project」。本作「梁塵の歌」をもって南アジア〜東南アジア編の最終章となった。インドネシアから招へいした伝統舞踊の担い手であるルルク・アリに、日本の儀礼、振付(舞の所作)についての考察を深めてもらうため、長野県遠山郷霜月祭の伝統芸能である神楽のレクチャーを受けてもらい創作プロセスのひとつとした。それによって、北村とのクリエイションの中に日本の伝統芸術・芸能のフィードバックも取り入れて作品を協働し製作、アジアを貫く現代の身体表現、舞踊作品を上演した。 それぞれの出身国・地域、言語、表現形式を超えて、個々の身体が対話を自由に行う様を、未来の身体同士のコミュニケーションと捉え、発話や運動のリズムに「のっとり、のっとられる」、というある種の「憑依現象」をイメージし、振付方法論を思考した。また、演出面ではアジアの伝統芸能の特徴でもある「語り、歌、音楽が生み出す物語」を課題とし、欧米で発展してきたダンス創作・演出の方法論に依拠せず、振付家としての新たな試みを強く掲げ、ダンサー、ドラマトゥルク、音楽家らと共にそれらを達成することができた。 さらに活動の発展として、ルルク・アリによる大学、劇場と提携したインドネシア伝統舞踊のワークショップやレクチャーの実施、遠山郷霜月祭でのプログラムと合わせローカルな地域コミュニティーのなかで、互いの文化の紹介・学び合いを通して、様々な世代との交流を行った。
Achievements of FY 2017 https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/en/grant/cc1715/
Achievements of FY 2015 https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/en/grant/cc1523/
Related project https://grant-fellowship-db.asiawa.jpf.go.jp/en/grant/cc1825/
- Related Countries
- Japan, Indonesia, India
From the Organizer
カンボジア、インドネシア、インド、日本、とそれぞれ異なる背景を持つアーティストらとの共同作業は4年目を迎え、その創作方法のあり方も年々深まり、それぞれの土地に根付く文化と現代への変容をしっかりと捉え、互いに混ざり合うことで進化する表現方法へと昇華することができた。その中で、発話や身体のリズムに「のっとり、のっとられる」といったような現象を、ある種の「憑依」と捉えるなど、「古代から今、未来」を思考する身体同士の対話をテーマとすることで、新たな振付言語の探求を行うことができた。2016年より継続してきた本プロジェクトでは、公演のみならず、国内外でのフィールドリサーチ、研究会などの創作プロセスを重要視し、それらを諸地域で一般公開することでその内容を紹介するとともに、創作者側も一般の参加者から大きく刺激を受けてきた。今後もアーティストのみならず、学術機関、劇場、地域の共同体、などとの連携を強化し、国際的に地域と地域を結びつけるネットワークを構築し、派生的な創作活動も進め、その成果を今後も定期的に日本、アジア各国での公演や報告会という形で発表していきたい。